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    「お粗末ではござりまするが、どうぞごゆるりと」

    「何かの、それは」

    心中もその宿を出て、近所の海岸から入水するか、山や森へ入り込んで劇薬自殺を企てるたぐいは、旅館に迷惑をあたえる程度も比較的に軽いが、自分たちの座敷を最後の舞台に使用されると、旅館は少からぬ迷惑を蒙こうむることになる。

    「それでは」

    「おい、今高間君が来ていたんだよ」

    徳次は自分のことのやうに熱心に路順を考へた。

    「どういたしまして。お茶位さし上げんと」

    「ふむ」

    「半之丞の子は?」

    「えらい評判ですなあ。けつこうですよ。ぜひ話しに来て下さい。わたしはこんなにいつもひまですからな」

    小谷はやさしみのある顔をぽつと紅らめ、いくらか饒舌になり、それと共によけいきいきいする声で話した。

    根津は自分の座敷から脇差を持ち出して再び便所へ行った。戸の板越しに突き透してやろうと思ったのである。彼は片手に脇差をぬき持って、片手で戸を引きあけると、第一の戸も第二の戸も仔細なしにするりと開いた。

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